はっきりした人 その3
まだ彼女のことをよく知らなかった頃、たいして意識することもなく「専門の分野は何?」と尋ねたことがありました。
私の顔をギョロリとにらみ彼女は答えた。
「私は専門家じゃないの。ジェネラリスト。写真を撮ることが私の仕事。対象は何だって構わない」
けんもほろろのその答えに呆気にとられ、まるで「馬鹿な質問をしてしまった」ことを恥じる子供のような心境に陥った私。
実際、彼女は何でも撮る人でした。
インタビュー写真、静物、イソテリア、風景・・・。
カラー写真、モノクロ写真、構成写真、切り抜き写真、自然光の写真、凝ったライティングの写真・・・。
ところで素っ気ない返答で私を「窮地に追い込んだ」ことに気づいたのかどうか、間もなくつけ足すように彼女はいった。
「もちろん、強いていえばスタジオ撮影が多いっていうことくらいはいえるわよ。
コマーシャルやカタログの仕事の依頼は、まず9割以上がスタジオ。
でも私は仕事がくればいくらでもスタジオの外に出ていくわ。
偉くなったからこんな仕事は受けられませんっていうようなカメラマンが多いけど、私はそういうふうにこちらは重要な仕事、こちらは軽い仕事、というような区別をしないタイプなのよ」